TOEIC(L&Rテスト)についての批判で最も多いのが、「TOEIC高得点でも、英語がしゃべれないんじゃ意味ない」というものです。ネットでも常に議論になっているので、私なりの見解を述べておきます。
結論
◎TOEIC高得点は英語スキルの素地の証明
◎スピーキングには、素地に加えてそれ専用の訓練が必要
◎TOEICと楽しい英会話はベクトルがちがう
TOEICはビジネス英語の基礎力を測るテストです。TOEICの公式な表現を借りると、「適切なコミュニケーションができる素地を備えている」かどうかをスコア化する試験です。測るのはあくまで「素地」なので、テストはマークシート式で、スピーキングやライティングもありません(TOEIC Speaking & Writingテストという別売のテストはあります)。
では、TOEIC高得点者が備えている素地とは何なのでしょうか。まずは、英文法の基礎です。「文法より話の中身が大事」という人もいますが、文法も馬鹿にできません。「あなたは興味がありますか?(Are you interested?)」と言うべきときに、「あなたは面白い人ですか(Are you interesting?)」と言えば、失笑を買ってしまいます。他にも、英語の会議などが大まかに理解できるリスニング力や、Eメールやレターの主旨がくみ取れる読解力もTOEICスコアが直接証明できるスキルの中に入ってきます。
しかし、「話す・書く」というアウトプットができるようになるためには、それ専用のトレーニングが必要です。これは、バタフライが泳げるようになるためには、バタ足ではなく、バタフライの練習が必要なのと同じ。だからと言って、最初に習うバタ足に意味がないわけではありません。すべては学びのプロセスなのです。
そして、TOEICと一般的な英会話では目指しているベクトルがちがうということも理解しておく必要があります。TOEICの英語は、ざっくり言うと「事務手続き英語」です。業務に必要なスケジュール調整や承認申請などに関する表現がテストの中心です。一方、英会話では、自分の趣味やプライベートに関する話題が一般的でしょう。このギャップがあることから、TOEICハイスコアを持っていても、カジュアルな英会話には慣れていないということはあり得ます。
ただし、英語の素地が身についていれば、スピーキングを身につけるのにそれほど時間はかかりません。私自身も、語学留学でスピーキングを身につけましたが、2〜3か月でそれなりに意思疎通はできるなったのは、受験英語で培った基礎があったからです。国内では留学生のように英語漬けの生活は送れませんが、毎日少しずつ話す訓練を継続すれば、半年〜1年で効果が実感できるはずです。
TOEICで素地を身につけてからスピーキングにステップアップするという学習法は、慎重で堅実な日本人にフィットするメソッドです。「いきなり英会話なんてムリ」という方は、まずTOEICを活用して英語の基礎固めに取り組んでみるのはいかがでしょうか。